NHK 技研公開を見学

毎年この時期に開催される世田谷砧にあるNHKの技術研究所の一般公開「技研公開」を見学しました。10年ぐらい前は毎年のように見学をしていたのだけれど、気が付いてみたら4年ぶりでした。

前回と比べて充実していた展示内容でした。 前回は幅広い層にアピールするためか技術展示面では浅く、展示数も数が少なくなっていましたが、今回はポスターセッションも多数あり、ブースの数も増加していました。一方パネルはこれまでの研究員の手書きのようなものから、一般人が期待するNHKのテロップレベルのデザインとなっていました。
気鋭の研究員が説明するので、いくら正面から斜めから突っ込んで質問してもこちらの意をくんだ的確な回答してくれて、ラリーのように質疑応答を繰り返せるという気持ちのよい時間でした。
ビッグサイトや幕張でやっている展示会とはレベルが違うな。
来年も来ようかなと思いました。

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今年の大きな発表テーマは「ハイブリッドキャスト」と「スーパーハイビジョン」。

ハイブリッドキャストは最近出てきたテーマだろうか。現在の放送中の番組と連携してテレビやテレビ局とインタラクションする連携型のアプリと、番組との連携なく番組表は過去のアーカイブを見るような独立型のアプリがあるそうだ。
技術的にはHTML5ベースのアプリで開発ができるようなプラットフォームになっていて、すでに各民放と実験サービスを企画しているそう。
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こういう試みは今のデータ放送でも試みられているけれど、まだまだ一般的とは言えないし、最近はテレビと接続せずともネットの世界に閉じても実現可能だな。研究者の方は、見ている番組に応じたコンテンツが手元に流れてくることやテレビで操作できることが差異だと説明してくれたけど、視聴者に響くだろうか

ハイブリッドキャストのサービスいろいろ

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双方向操作の典型的なデモ。視聴中の番組に応じた情報が手元のタブレットに表示されています。出演者や番組で紹介された情報をタップすると、テレビ画面上に情報が表示されたり、 また画面下に自分のアバターをだし、他の視聴者と同時刻に感性を上げたりブーイングしたりと盛り上がることができるという仕組み。
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もう一つ。 「テレビノート」というアプリはテレビ視聴中に気になった場面で気になった場所をタップしておくと、後ほどその場面に関する情報が提示されたり、さらに友人が気になった場面がお互いわかるというソーシャルな仕組みまで入れたシステム。


もう一方の花形の「スーパーハイビジョン」。解像度が今の地デジハイビジョンの16倍の8000x4000ピクセルという解像度の高い方式で、こちらはもう10年以上前から技研公開のメインテーマになっています。 最初のころはカメラも車のトランクぐらいの大きさで、ディスプレイも無く、4kパネルを4枚並べて表示していたのですが、今回はかなり進化して実用に徐々に近づいていっています
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手前が今回の小型カメラ、奥が従来のカメラ。ずいぶんと小型化が進んできています
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伝送方式も改良が進んでいて、スーパーハイビジョンで必要な帯域を性能の良いコーデックで圧縮し、伝送方式にも工夫を凝らして地デジの帯域で送信ができるほどになっているそうです。4096QAMという超多値符号化を行っているそうです。地デジは64QAMなので桁が違って驚き
スーパーハイビジョンは、ロンドンオリンピックで撮影したVTRを講堂の大型スクリーンで鑑賞しました。スタジアムでも選手にズームすることなく目を凝らせばフィールドのそれぞれの選手の表情が見えるのですね。

スーパーハイビジョンNHKがやらなければいったいどこで進めるのだという特異な技術である一方、ハイブリッドキャストは別に放送技研で研究する必要はなく、WEB業界で力のある会社と大学の連携ででも出来るものではないかとは思う。テレビ縛りをやめれば、いくつかはニコ動/ニコ生、Youtubeでもありそうだ。ソーシャル連携やお勧め動画の提示機能など。




そのほか
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MATRIXでおなじみの、カメラアレイを使った撮影システム。複数のカメラを連携してパンするなど工夫が凝らされています。徐々にスポーツ中継で使われるようになるようです。

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タイトルに「二次創作」というキーワードが入っているため、一部で「NHKが二次創作解禁の流れか?」と期待もされていましたが、実際には視聴者向けの動画オーサリングツールの開発でした。サンプルのキャラクター画像や背景画像を組み合わせ、さらにはセリフ、カメラ回しなどを指定すると、レンダリングサーバで動画を作成するそうだ。作った動画はSNSのように投稿も可能で、NHKとしては携帯大喜利のような視聴者参加番組のユーザ側ツールとして使うことを考えているそうです。

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TwitterでのNHKに関連するツイートも解析して番組評価に役立てているそうです。現在はまだネガティブ・ポジティブな意見をキーワードベースで集計する程度だそうですが、後々賢くなってゆくのかな

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タブレットをテレビ画面にかざすと、テレビがさらに拡張現実となるという。リアル貞子?仕組みとしてはテレビの一部にARマーカーを仕込んでおき、テレビ画面をスマートデバイスのカメラで撮影すると画面だけでなく拡張された映像が映し出されるという仕組み。将来は「電脳メガネ」の世界を作るのが目標だそうだ。

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ハンディカメラで正確な位置情報を取得できるように工夫し、その画像からリアルタイムCG合成ができるようにしたシステム。 これまではスタジオでコンピューター制御のクレーンなどがないと位置合わせが出来なかったが手持ちでできるというのは、きっと番組制作者には自由度が上がるのだろう。

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テレビ放送開始当初のテレビカメラ。ズームレンズがないから切り替えて使うのね。フォーカスは3本とも連携して合わせられるように中央の歯車が3つのレンズのピントリングに接続しています

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