東芝 「HD DVD事業の終息について」を読む

一昨日からの報道で、事実上東芝HD-DVDからの撤退は分かっていましたが、今日東芝から正式にリリースがでました。

このリリース、読んでみると、「規格がなくなってごめんなさい」というものではなく「今後につながる、前向きな判断です」という論旨で貫かれてます。 論理展開は参考になるなあ。


http://www.toshiba.co.jp/about/press/2008_02/pr_j1903.htm

HD DVD事業の終息について
2008年2月19日

 当社は、これまでHD DVD規格に基づいたプレーヤー及びレコーダーのグローバルな事業を展開してまいりましたが、本年初頭の大幅な事業環境の変化に際し、今後の事業戦略を総合的に検討した結果、同事業を終息することを決定いたしました。
 HD DVD規格は、200社以上の国際企業から構成されるDVDフォーラムで現行DVDを継承する次世代DVD規格として策定され、現行DVDとの高い互換性や、ネットワーク接続機能などの先進性を備えた国際規格であり、当社は事業推進に鋭意取り組んでまいりました。しかしながら、異なる規格が併存することによる、いわゆる次世代DVD議論の長期化による当社の事業への影響はもとより、消費者の皆様をはじめとする市場における影響に鑑みて、早期に当社の姿勢を明確にすることが重要と判断し、今回の決定に至ったものです。

ビジネス文書なので最初の段落で事実(「終息します」)を述べているのはセオリ通りですな。
次の段落で「HDDVDは具体的にこんなに優れていたのだ」「しかし 現状はこのまま進めていても事業性がないので、早く決断した」と判断の正当性を述べているのですなー。 「終わってしまって申し訳ありません」じゃないのだわなー。
で、次の段落では、具体的に今後の計画(既存のお客様には影響はありません) ってことが書かれていってます(ここは中略)

 

今後は、市場動向を見極めながら、当社が持つ半導体のNAND型フラッシュメモリや大容量で小型のHDD等のストレージ技術や、次世代CPU、画像処理、ワイヤレス技術、暗号処理技術などを最大限に生かし、新たなデジタルコンバージェンス時代に適した次世代映像事業の中長期的な新戦略を再構築してまいります。
 なお、当社は今後も消費者、及び産業界にとって最適な光ディスク規格を議論・策定する団体であるDVDフォーラムのメンバーとして、DVD業界の発展に貢献していきたいと考えています。

で、ここが重要だわなー。 「当社が持つ様々な最先端技術」 なんて抽象的な書き方じゃなくて、 得意分野をたたみかけるように具体的に書き下しているのか。 なるほどー ...

HD DVD は無くなるけど、こういうコア技術を持っているので、「デジタルコンバージェンス」、つまり デジタル装置の融合、放送と通信の融合を目指すってことなんですなー。 音楽販売の主流がここ2年ぐらいでCDからネット配信のiTunes に移っていったように、 今後は映画など動画の販売が、パッケージメディア(DVD)から 半導体メモリ(SDカード)やVoDのようなネット配信になるということを念頭においているのかなー。

こういうリリースって、「終わってごめんなさい」じゃなくて「別の明るい未来があります」っていうような見せ方をするのだなあ。


東芝は、 HD DVD の撤退が不可避となってから、撤退をプラスに転換させるように策を練っていたのだろうな。 それが、 「HD DVD終息宣言」と「1兆7000億円投資してフラッシュメモリ工場建造」のリリースを同時に出すというというものなのだろうな。HD DVD撤退でマスコミの注目が集まる中で、同時にフラッシュメモリに集中します というリリースをだすことで、「撤退」というマイナスイメージではなくって、「有利な分野にリソースを集中」という報道がされるもんな。

東芝NAND型フラッシュメモリの新工場を建設 - 投資額は1兆7,000億円超
http://journal.mycom.co.jp/news/2008/02/19/044/


さすがです。。



それはそうとこの文章が何かに似ていると思ったら、「玉音放送」だ。。。
玉音放送 原文、現代語訳、 昭和天皇の声)↓
http://homepage1.nifty.com/tukahara/manshu/syusensyousyo.htm